自転車旅スケッチ 2009年 central Asia編

cover-image-09挨拶写真キルギスタンにて

イントロダクション

 2009年に行った、中央アジア、シルクロードの天山南北路をたどる自転車旅からのスケッチを載せました。

 2009年夏、6月初頭に神戸を出航し、上海から列車でシンジャン地方のウルムチへ移動しました。ここから自転車をこぎ出し、カザフスタン、キルギスタ ン、ウズベキスタンと走り、キルギスタンに戻って中国カシュガルへ、そこからウルムチまで走り、列車と船を乗り継いで8月末に神戸に帰ってまいりました。

 このあたりはシルクロードで知られるように東西交易で栄えた地域でした。今も西から東へ、東から西へと大陸を渡っていくバックパッカーやモーターリスト、 そして自転車旅行者が多数行き交う地域です。キルギスやウズベクの都市部の宿では、数人の自転車旅行者が同宿することは珍しくありませんでした。

 このような世界各国からの旅人と親交を深める一方、現地の人々との暖かいふれあいもこの旅の大きな楽しみでした。ことにこの地方は旅人に暖かいだけでな く、親日的感情を大いに見ることができました。サムライ、オシンのみならず、ヤマモトカンスケと声をかけられたのには驚きました。

 百人以上が死亡した、ウルムチにおける動乱勃発のニュースを聞いたのはキルギスタンのビシュケクの宿ででした。一時中国国境が閉ざされ、旅程がどうなる かと心配しましたが、カシュガル、そしてウルムチへと走り抜けることができました。しかしシンジャン地方の厳重な警戒振りには悩まされたのですが。一介の 旅人としても平和への願いは切実です。

 今回の旅でもいつも通り、自転車のサイドバッグには水彩スケッチ具を入れてありました。自転車を停めて道端で、野宿のテントの前で、街の宿に泊まれば宿 中で、そして歩き出て街中でスケッチを行いました。時には通りすがった自転車旅行者に励まされ、あるいは時雨空に脅かされ、取り巻く子供のヤンチャに悩ま され、あるときは旨そうな串焼肉の匂いを楽しみながらのスケッチでした。

 いずれのスケッチも水彩絵の具を用いて現場で描き上げたものです。見ていただき、現地での私の感動を共有していただくことができたならこの上ない幸せです。

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 コルガス国境近く  6月18日

 中国シンジャン地区からカザフスタンへの国境を前にして。 とうもろこし畑の縁にキャンプし、朝にスケッチした。単車でやってきた農夫がしばらく私のスケッチを見物していたが、やがて畑仕事に取り掛かった。

 

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 カザフスタンの原野  6月20日

 夕方、道を外れてカラカラに乾いた原野の中に進み、テントを張った。画材を広げてスケッチを始めた。たかるハエや上がってきたフンコロガシがパレット上の水分を吸う。

 

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 カザフスタン ケゲン国境  6月24日

 キルギスタンへの国境に早く着きすぎ、出入国手続きが始まるまで待った。その間に、天山山脈であろう山とぼくや牧野をスケッチする。遠くに白い遊牧テントが見える。

 

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 ヤクトゥル(ヤクホテル)の中庭  6月28日朝

 キルギスタン東部の町、カラコルにある宿。世界中からやってくるバックパッカーやハイカーでにぎやか。宿主のおばあさんが丹精するバラが、不動のシトロエン2CVに美しく映える。

 

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 カラコル町外れ  6月28日午後

 山岳と湖の国キルギスタン、カラコルはその観光、トレッキングの基点になる町。町の南に迫る山脈をスケッチする。

 

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6 イシュククル湖  6月30日

 イシュククルは温かいを意味する。厳寒の冬季にも凍結しないためだそうだ。7世紀、インドへの途上にこの地を訪れた玄奘三蔵も「熱海」と漢訳している。湖底の古代遺跡を覆う深い色の湖水をたた湛えている。

 前日、雨中にキャンプした。朝には晴れて、テントの中からスケッチする。白く輝く対岸の雪山は新雪で化粧されたのだろう。

 

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 イシュククル湖 道べりにて  6月30日

 キャンプをたたみ、湖の南岸道を走り出した。左手にも、右手の対岸にも雪山が続く。走り出して間がないのだが、あまりの美しさに自転車を停め、道端でスケッチを始めた。

 

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 アラ・トー(キルギス山脈)  7月7日

 キルギスタンの首都、ビシュケクは緑の多い都市。広大な人工森と多数の池を持つ公園近くで、運河越しにスケッチする。天山の支脈、アラ・トー(キルギス山脈)が南の空に立ち上がっていた。

 

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 トクトグル湖  7月12日

 キルギスタン中部にある、ダムでせ堰き止められてできた人工湖。 湖を見下ろしてキャンプした。朝にテント脇からスケッチ。

 

 

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 レギスタン広場あたり  7月23日

  ウズベキスタンの古都、サマルカンドの観光目玉、レギスタン広場。三方を取り囲む壮大なイスラム建築はかつての神学校。 博物館入り口の、日陰になった階段上に座り込んでのスケッチ。

 

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 バハディールの中庭  7月24日

 サマルカンドのバックパッカー用達宿、バハディール。ブドウ棚からの木漏れ日が、スザネと呼ばれるウズベク名産の刺繍布に踊る。 西から東へ、東から西へと向かう、世界各地からのサイクリストが集まり、何台もの自転車が中庭に置かれていた。キルギスから知り合いの4サイクリストも同宿だった。宿仲間と歓談しながらのダラダラスケッチ、2日掛りになった。

 

 

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 シャブバザール  7月24日

 サマルカンドの巨大市場。大変なにぎ賑わいを見せる。衣類を扱う区画の2階通路に座り込んでスケッチを始めた。見物に集まってくる 人々のうち、背後の店から来たおばさんが画面の中に描くモスクを指差し、盛んに「ビビハニム、ビビハニム。」と口にする。中央アジア最大のモスク、オリジ ナルはチムール王妃ビビハニムにより15世紀初頭に建てられたそうだ。

 スケッチを終え、ナンを買って帰った。油布で磨かれてツヤツヤ光るサマルカンドのナンはおいしさに定評があるのだそうだ。

 

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 ターキ サラファン 朝  7月28日

 ウズベキスタンの古都、ブハラ。サマルカンド以上に中世イスラム風情を色濃く残している。ターキは丸屋根を、サラファンは両替商を あらわす。いくつもの丸屋根を組み合わせ、十字路をおお覆って建てられた歴史建造物。かつては多数の両替屋が入っていたのだろうが、今は多くの土産物屋が 店を構えている。

 早朝からスケッチを始めたのだが、日中の暑さを避けてか、多数の観光客が通りかかる。次第に土産物屋も店を開いてきてにぎやかさを増してきた。

 

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 ターキ サラファン 午後  7月28日

 朝とは逆の方向の外からスケッチする。古い建物に囲まれた小さな公園の木陰のベンチに座り込んでのもの。

 

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 ラビ ハウズ  7月29日

 タジク語でラビは周辺を、ハウズは池を意味する。17世紀からたた湛えられるみずも水面には、周囲に植えられた桑の巨大な老木が影 を落とす。チャイハナ(茶店)が木陰に店を開き、人々の憩いの場となっている。スケッチする私の背後で音楽がかかり、ひと一かたまり塊の人達がダンスを始 めた。

 ブハラ旧市街を目指すツーリストはここを目印にやってくる。ここで同宿のサイクリスト達を見送り、後からやってきた顔見知りのサイクリスト達を迎えたのだった。

 

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 チョン アライ山脈  8月4日

 キルギスタン南西部。中国、タジキスタン国境近く。山の向こうはタジキスタン、パミール高原になるのだろう。 中国国境に近づいて落ち着かぬ気分だったが、この山をスケッチできる最後のチャンスかと思い直し、走り過ぎてしまった高みまで 自転車をこぎ返してスケッチする。川がうねる高地の平原には多数の家畜が放たれていた。

 

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 カシュガル旧市街のナン屋  8月8日 朝

 並べて売られる、タンドリー焼きのナンが朝日を浴びて金色に輝く。長屋潜り抜けの日陰に座り込んでスケッチを始めた。背後に自転車 で商う肉屋がおり、ヒツジの生肉の脂っこい匂いがただよ漂う。表通りに店を構えるいくつもの金属細工屋からけたたましい槌音が響いてくる。人ごみに囲まれ て我慢のスケッチ。

 

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 カシュガル旧市街のウリ売り 8月8日 午後

 2年前にはこの路地の入り口でスケッチした、同じモチーフ。 そのときにはウリ売りが来たが、今回はトマト売りだったろうか?とりあえずスケッチの台車の上はウリ色を塗っておく。 左の角にはメドレセ(イスラム神学校)がある。旧ソビエト圏では見なかった、身を覆う衣装の敬虔なイスラム教徒の女性が何人も通りかかる。

 独楽(こま)回しで遊んでいた子供たちが集まってきて、私の自転車や画材にチョッカイを出してくる。ヤンチャに対抗しつつ、の労作。

 

 

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 カシュガル旧市街のケバブ屋 8月8日 午前

 日陰になる裁縫屋の店先脇に座り込んで、通り向かいをスケッチし始めた。昼になり、ケバブ(串焼肉、中央アジアではシャシリクと呼ばれる。)屋の焼き台から、そして湯沸しからも煙が上がる。

 

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 ウイグル人市場通り  8月9日午後

 スケッチ20に見える門の前にある木陰のベンチに腰掛け、賑わう通りを見下ろしてスケッチを始めた。右手の店前に頭を寄せてテレビ に見入っていた子供たちが、番組が終わったのだろう、周りにやってきて騒ぐ。背後には散髪屋があり、先日そこで頭を刈ってもらったのだが、そのオヤジも やってきて間近からスケッチを覗き込む。ここでも我慢のスケッチ。

 

 

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 天山南路の乾燥原野   8月15日 朝

 前日夕刻、キジル千仏洞近くで激しい雷雨に見舞われた。そのおかげで、日ごろはつちぼこり土埃で霞む大気が澄んで、見通しの効いた光景が得られた。道を外れてのキャンプの朝、出発前にスケッチ。

 

 

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 クズルガーフ烽火台  8月15日 午後

 天山南路上、シンジャン地区に残る最大の烽火台。高さ15m。

 中国、シンジャン、どこへ行っても工事工事。新設の道路端にほとんど目に付かぬ小さな標示を見つけ、土道に下った。建設現場と飯場を抜け、わけのわから ぬ道らしきものをたどると、川向こうに塔が見えてきた。あたりには人気がなく、絶好のポイントを独り占めにしてのスケッチ。

 

 

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 スベシ古城    8月16日

 天山南路。シンジャン地区の都市、クチャ近く。このあたりは亀茲国として、古来より仏教文化が栄えていた。3~5世紀にかけて建てられた仏教寺院群の遺跡。

 遺跡近くでキャンプし、早朝からスケッチする。

 

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 ウルムチの人民公園   8月23日

 公園の中も外も工事工事。6月に来た時とはいささか様変わりしている。また走るつもりでいた、芝生のランニングコースも自動車道へと工事中だった。表の大通りも改築中で焼けたアスファルトの匂いが鼻をつく。

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